コメント返信しすぎて腱鞘炎に ──92万人がフォローする料理クリエイター 経塚翼さん × 明石ガクト 対談(後編)

「Creators Community Journal (CCJ) 」では、ワンメディア代表の明石ガクトと、第一線でチャレンジするクリエイターやブランドのキーパーソンを招いた対談を定期的に発信しています。
「簡単ダイエットレシピ」ジャンルで、TikTok のフォロワーが約52万人、Instagram では約40万人のフォロワーを誇る経塚翼(きょうづか つばさ)さんに、ワンメディア代表・明石ガクトが迫る対談企画。前編では「コーヒーが飲めないのにコーヒーチェーン店に就職した話」「約200社の面接に落ちた話」など、“素” の経塚さんが垣間見えてきましたが、今回は「バズる」動画の秘けつを探っていきます。
👉 前編はこちら
目次
料理ジャンルでの差別化。カッコつけず「ありのまま」をコンテンツにする

明石
経塚さんの動画タイトル、ちょっとワードの癖が強めじゃないですか。「最強無敵の〇〇」とか、「美味すぎじゃね―か〇〇」とか(笑)でもこれ、めっちゃいいなと思っていて。料理って、そもそもノンバーバルなものじゃないですか。今みたいに簡単に動画で撮ることもできなかったから、ほとんどのレシピって、本を参考にするしかなかった。そういった意味では、斬新な切り口でやられていると思うんですよ。
経塚さん
ありがとうございます。
明石
音楽の話で言えば、レコーダーがないと時に「五線譜」というものが発明されて、音符っていうのは、五線譜という紙に書こうと思ったから、ああいうオタマジャクシみたいな形になったみたいな。
経塚さん
へえ〜、その話面白いですね。
明石
後世の人に音楽を残すために、「ド」の音はここに書くとか、パイオニアみたいなことを経塚さんはやってるわけですよ。言葉にしただけで、料理が苦手な人でも理解ができる。そんなところに魅力があるのかなと思っているんですね。
経塚さん
それって自分のストーリーと繋がっていて、元々、料理が全くできない人だったのに、本も出せるようになったていうところで、ハードルを上げる気はまったくなかったんですよね。料理系のクリエイターは、多くが“ツッコミどころがない動画” で、いち視聴者としてそれは継続して見ないよなと感じていました。「ツッコミ入れたくなるぐらい適当」のほうが、仲間意識というか、ファンが付きやすい感じはしています。
経塚さんの料理動画投稿のサムネイル。固くなりすぎない癖強めなワードチョイスがファンの心を掴んでいる。

明石
以前このメディアで、ありちゃんというコスメレビューのクリエイターと話したんですけど、彼女も経塚さんがおっしゃったようなことを「不完全さが正義」っていう風に表現していて。完璧な動画だと、視聴して満足というか、そこからコメントで突っ込んだりというアクションにつながらないんじゃないかと思っています。
美容系クリエイターのありちゃんさんとの対談記事はこちら
「TikTok って不完全さがすごく正義なんですよ。YouTube やInstagram って、画質が綺麗だったり、ちゃんと作り込まれたりしているものをみんな見たがるんですけど、TikTokはスマホでサクッと撮って編集した動画でいい。不完全さがあるコンテンツって、ある意味広告とは真逆の位置にありますよね。だからリアルで信じてくれるから広まるし、コミュニティとしてコメント欄にみんなの声が集まっていって、信憑性が高まってさらに広まるっていうループになるんだと思います。
経塚さん
そうですね。「なんなんだこの人(笑)」って思われるのが結構大事ですね。とくに真面目なジャンルでそれをやることで目立つんですよね。エンタメ系でやると大して面白くないのが、料理系だと「こんなレシピクリエイター見たことない」ってなるんです。
明石
そこでちょっと深掘りしたいんですけど、テロップとかナレーションも癖が強めだなと思ってて(笑)その辺のこだわりってありますか?
経塚さん
これっていう型はなくて「ありのまま」って決めてます。ナレーションなんか一発勝負で、事故ったら事故ったままコンテンツにして(笑)30秒の映像尺に合わせて喋ると、結構事故るんですよ。喋っている途中に終わったり、最後早口になって何言ってるかわからないみたいな。それが面白さにつながってますね。
これっていう型はなくて「ありのまま」って決めてます。ナレーションなんか一発勝負で、事故ったら事故ったままコンテンツにして(笑)30秒の映像尺に合わせて喋ると、結構事故るんですよ。喋っている途中に終わったり、最後早口になって何言ってるかわからないみたいな。それが面白さにつながってますね。
明石
会社内の噂で聞いたんですが、撮影する時はものすごい早朝に起きて自然光で撮影してるっていうのは本当ですか?
経塚さん
本当です(笑)なんやかんやエンタメ寄りにはしていますけど、「美味しそう」には見せたいんですよね。やっぱり料理は光が一番大事なので、ライトを当てるよりは朝陽かなと。
明石
もしかして、東京に引っ越してくる時も、物件選びでは日差しを意識してました?
経塚さん
そうですね。内見もせず、日当たりとキッチンしか見てなかったです(笑)でも住んでみたら物件自体が結構狭くて、家のものが入らないっていう事態が起きたんですよね。あと、駅から徒歩40分とかの場所にあって、それもキツかったです。
明石
東京でそれは結構衝撃だな(笑)もし今後経塚さんがどんどん稼いで、別の場所に引っ越しされるなら、物件選び得意なので、ぜひ相談してください。
経塚さん
いいんですか(笑)それは贅沢ですね。
コメントに返信しすぎて”ガングリオン”が発生

明石
コンテンツや見せ方をどうするかっていうところで、「考える時間」は必要だと思うんですけど、それでひとつ思い出した話があって。ちょっと前にスタートアップ会社の社長が集まる会で、「まだ上場もしてない会社の社長がサウナに行ってんじゃねえよ論争」というよくわからない議論があったんですよ(笑)
要は、サウナというものをどう捉えているかっていう話で。私はサウナ部屋に入っている時に何を考えてるかといったら、ほぼ「仕事」のこと。でも、「リラックスタイム」として考えている人たちもいるわけです。「行ってんじゃねえよ」と言われている人たちはリラックスする側で。経塚さんの発想を見るに、生活全体がクリエイティブに向いているから、僕と一緒のサウナ時間を過ごすのかなと。
経塚さん
まさにそうですね。僕もサウナにはよく行くんですが、ずっと何かしら考えているインプットの時間です。
明石
じゃあ、水風呂入ってる時は急にひらめきが降りてきたりしません?サウナでじっくり考えていた考えが、水で一気に研ぎ済まされて、外気浴中に「こういうことだったのか!」みたいな。
経塚さん
めちゃくちゃわかります(笑)その時すぐにメモ取りたくなります。
明石
サウナの難点は本当にそれですよね。「メモが取れない」ってこと(笑)そう考えると、クリエイターと企業家ってのは、ある種近いものはあるのかなっていう風に思ったりしますね。経塚さんの書籍が1位を取れたのって、クリエイターとしてのプロセスが間違っていなかった証拠だと思うんですけど、何を一番大切にしています?
経塚さん
大切にしているのは、「ファンの方を誰よりも大切にする」っていうことですね。みんなフォロワー数を増やしたりとか、チャンネル登録者を増やしたいと思うんですけど、僕は数より「深さ」を気にしています。
大切にしているのは、「ファンの方を誰よりも大切にする」っていうことですね。みんなフォロワー数を増やしたりとか、チャンネル登録者を増やしたいと思うんですけど、僕は数より「深さ」を気にしています。
明石
その「深さ」って何で測っているんですか?
経塚さん
同じジャンルのクリエイターと比べた時のコメント数ですかね。コメントするのって、相当好きじゃないとできなくないですか?結局その部分が、イベントした時の集客とか、クラウドファンディングの金額にもつながってくるのかなと思います。
同じジャンルのクリエイターと比べた時のコメント数ですかね。コメントするのって、相当好きじゃないとできなくないですか?結局その部分が、イベントした時の集客とか、クラウドファンディングの金額にもつながってくるのかなと思います。
明石
たしかに。僕は、SNS 上のキャラがロン毛で得体のしれない感じが出ているから、誰もコメントしてこない(笑)Twitter も、コメントでの会話量がアルゴリズムに関わってきていて、最近、マジツイートしにくくなってます。もうそろそろこのキャラクター終わりにしようかなんて考えてますし。
経塚さん
でも、顔出ししている人であれば、コメントがなくてもフォロワーに深く刺さりそうですけどね。
明石
どうなんでしょうね。まあ、その時のプラットフォームのアルゴリズムにあった戦い方はありそうですね。それより、経塚さんがコメント数を意識してるって聞いて、すごく合点がいったなあ。とにかくコメントを返してるじゃないですか。
経塚さん
そうなんです。コメントに返信しすぎて腱鞘炎になりました。ここにガングリオン(※1)ができましたよ。
明石
本当だ!すごい。ちょっとこれは写真撮ってもらいましょう。こんなの見たことないです。
点線箇所がガングリオン部分。コメント返信を怠らない経塚さんのファンへの愛の深さがうかがえる。

経塚さん
有名になってくると、コメント返さないみたいな風潮があるんですけど、僕はもったいないなと思っていて。新規でコメントが来たら「この人をファンにするチャンスだ」と思いますもん。
明石
僕はコメント全然返してないんですよね。放置スタイルにしている自分をぶん殴りたい気持ち(笑)
“飛び級”で面白い人に会えるのがクリエイターの利点

明石
読者の中にも、会社員で、これからなんかやってみようかなって考える人もいると思うんですけど、クリエイターになってみて、何が一番楽しかったですか。
経塚さん
「出会い」ですね。普段の生活じゃ出会えない人と、飛び級で出会えるみたいなところ。例えばこういう風にガクトさんと話すってなると、経営者とかにならないと難しいと思うんです。Twitter フォロワーが6,000人を超えたぐらいから、自分より格上の社長さんとか、面白いことをしている人とお会いする機会も増えたし。またその出会いで価値観変わっていったりとか、人生が加速度的に進んでいる感覚がするんですよね。
明石
マジでそうですよね。僕も社長になってよかったと思うことのナンバーワン。一応これを「山のロープウェイ理論」って名付けているんですけど(笑)例えば、山のてっぺんにいる人同士でロープウェイをつなげたら交流がしやすいじゃないですか。でも、山の中腹にいたら、ロープウェイをつなげる以前に、どんな人なのかも視認できない。クリエイターにしても、社長にしても、ある分野で頂上に立っていると、ほかの頂上にいる人たちから「ちょっとこっちおいで」とロープウェイをつなげてくれることがあるんです。それがさらに自分の山を一段高くしてくれる感じがあって。
経塚さん
あ、それ今日からパクらせてもらいます(笑)。本当にそうですね。
明石
なので、繰り返しにはなるんですけど、経塚さんのいる「レシピ・グルメ山脈」は非常に高く険しい場所なんですけど、そういう中で経塚さんにしかできないルートで、頂上にいられるのはすごいなと思います。これからも引き続き居続けてほしいです。
経塚さん
ありがとうございます!いやあ、いい話聞けたな。めっちゃ勉強になりました。とりあえず今日サウナ行って考えごとしてきます(笑)
※1 ガングリオンは、手足などにできるコブ状の腫瘤。中にゼリー状の物質が詰まり膨らんだ腫瘍で、多くは良性の腫瘍。
丨 PROFILE

経塚翼
サラリーマン時代に発信活動を開始。その後面倒くさがりでもできる「ダイエットレシピ」でフォロワーが増え、現在TikTok フォロワー52.5万人、Instagram フォロワー39.9万人(2022年11月7日時点)。初の著書に『うますぎッ!太らないごはん』(KADOKAWA )
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